国の財務諸表を読んでみた(その1)

企業の財務状況と収益状況を調べるときに真っ先に調べる資料が財務諸表だが、日本政府も財務諸表を公開していることはあまり知られていない。

2018年1月末に2017年3月31日時点の財務諸表が公表されたので、貸借対照表(B/S)を中心に読んだ内容をメモしていく。
国の財務書類 : 財務省

国の債務超過額

国の貸借対照表
国の貸借対照表(財務省資料より作成)

国の債務超過額は、B/Sでは約549兆円となっている。ニュースなどで国の借金が1,000兆円近くに上っているという記事は時々出るが、債務超過額としてはその半分強の金額となっている。

この点を捉えて「国債の額だけじゃなくて資産も見ろ!」と主張する人が一定数いるが、残念ながら、国のB/Sに計上されている資産は、民間企業のB/Sのように換金可能な資産が大半を占めている訳ではない。

というわけで、次は資産の内容を見てみる。

国の資産状況

国の資産の各科目の金額を、大きい順番に並べると次のとおりとなる。

科目 金額 (兆円) 構成比
固定資産 182 27.0%
有価証券 120 17.8%
貸付金 116 17.2%
運用寄託金 109 16.2%
出資金 72 10.8%
現金・預金 55 8.2%
その他資産 19 2.8%
国の貸借対照表の資産の内訳
国の貸借対照表の資産の内訳グラフ

そこで、まずは資産に占める割合が最も大きい固定資産について確認してみる。

固定資産の内容

国の固定資産の内訳
国の固定資産の内訳グラフ

公共用財産

上記のグラフのとおり、国の固定資産の大半は公共用財産(道路や河川など)である。この公共用財産の内訳は、用地が40兆円、舗装や護岸などの各種施設が110兆円、建設中のものが0.4兆円である。

舗装や護岸施設が売却できると思う人はいないと思うが、用地なら、道路や河川として使う部分以外を売却できると思う人がいるかもしれない。そういう人には、用地の帳簿価格40兆円というのは魅力的に見えるかもしれないが、そもそも、用地買収は必要最低限の部分しか購入していないので、不要部分はほとんどないのが現実である。

国有財産(公共用財産除く)

次に、公共用財産を除く国有財産について確認してみたいが、財務諸表に詳しいデータがないので、他のデータでカバーする必要がある。国有財産のデータは財務省が公表しており、土地だけではあるが、用途別の価格が分かるので、その資料を見てみる。(国有財産の6割弱は土地なので、このデータで全体の傾向に代えることとする。)

国有財産の現在額(財務省公表資料)
国有財産の現在額(財務省資料)

用途別の国有財産の価格(地価)を見た場合、価格が1兆円を超えているのは次の4種類である。この4種類の財産の価格が国有財産の土地の価格の5割、国有財産の3割を占めている。

  1. 防衛施設(3.9兆円)
  2. 在日米軍への提供財産(2.0兆円)
  3. 地方公共団体への貸付(1.8兆円)
  4. 国有林野事業(1.1兆円)

まず、自衛隊の施設や米軍基地を売却するのは事実上不可能と言ってもいいだろう。

次に地方公共団体への貸付については、国有財産統計(平成27年度)の第4表で普通財産の内訳が公表されており、それを見ると、地方公共団体への貸付の7割が無償貸付であり、無償貸付は公園などが対象であることから、国に土地を返還させて入札で売却することは無理であろう。

国有財産統計 平成27年度 第4表 普通財産(土地)の現況
国有財産統計 平成27年度 第4表 普通財産(土地)の現況

国有林野事業の財産については、そもそも林業が低迷している日本で、国有林から多額の収益を得ることは非常に難しいであろう。

こうしてみると、国有財産で明確に換金可能財産として考えられるのは、普通財産の未利用国有地ぐらいのものであろう。その他は、不要部分があればその部分だけ換金は可能だが、量としては多くないであろう。

固定資産の結論

国のB/Sで国有財産は最も大きな割合(27%)を占めているが、換金可能性という点からみると、ほとんどの財産が換金不可能だと思われる。つまり、換金できない以上、債務の償還に直接用いることは事実上不可能ということである。

換金不可能と思われる資産をB/Sに計上するのはどうかと思うが、SNAの期末貸借対照表には、道路やダムなどの社会資本が【非金融資産 -> 生産資産 -> 固定資産 -> その他の建物・構築物 -> 構築物】に計上されていることから、こちらでも計上されたのではないだろうか。

次は有価証券について見ていくが、長くなったので次の記事にする。