国の財務諸表を読んでみた(その2)

前の記事の続き。

2018年1月末に公表された2017年度末時点の財務諸表を、貸借対照表(B/S)を中心に読んだ内容をメモしていく。

国の資産状況

国の資産の各科目の金額を再び掲載してみる。

科目 金額 (百万円) 構成比
固定資産 181,825,266 27.0%
有価証券 119,868,932 17.8%
貸付金 115,550,240 17.2%
運用寄託金 109,111,900 16.2%
出資金 72,452,450 10.8%
現金・預金 55,239,666 8.2%
その他資産 18,693,457 2.8%
国の貸借対照表の資産の内訳
国の貸借対照表の資産の内訳グラフ

前の記事で固定資産を取り上げたので、この記事では有価証券と貸付金を取り上げる。

有価証券

有価証券の97%は外国為替資金特別会計(通称「外為(がいため)特会」)が保有している。円高が進行すると『円売り・ドル買い』の為替介入が行われるが、その介入を行う際は、この特別会計が政府短期証券(償還までの期間が最長でも1年間の国債)を発行して円を借り、その借りた円を売ってドルを買っている。買ったドルは、債券などで運用しており、B/Sに計上されている有価証券は、ドル資産を含めた運用中の資産である。また、借り入れしている円の残高は、負債の部に計上されている85兆円である。

外為特会の資産の内訳は「国債77%、その他23%」というところまでは公表されているが、ドルやユーロなどの通貨別の内訳までは公表されていない。通貨別の内訳が分かると市場に影響を与えることを懸念しているらしく、肝心な情報は非公開である。ただ、外為特会では多額の米国債を保有していると言われている。

この米国債を市中で売却すれば、売却代金で債務を早期返済して利払いを減らせるが、アメリカが米国債の大量売却を許すとは到底思えないし、一度に売却することを許してくれる国もないだろうから、運用している国債が満期になって償還されるのを待つしかないだろう。債務に対応する資産があるのは確かであるが、資産の換金が困難であることは踏まえておく必要があると思われる。

貸付金

貸付金のほとんどは、国が地方公共団体などに融資する財政投融資である。貸付金の財源は、負債の部に計上している公債の一部(財政投融資特別会計国債:96兆円)と預託金6.5兆円である。

財務諸表の40ページに貸付先のリストがあり、グラフにすると次のとおりである。

貸付先毎の2017年3月31日時点の残高グラフ
貸付先毎の2017年3月31日時点の残高グラフ
貸付先毎の2017年3月31日時点の残高
貸付先毎の2017年3月31日時点の残高

地方公共団体への貸付が半分近くを占めており、その他、日本政策金融公庫などの政府系金融機関や、都市再生機構(UR)や日本学生支援機構(奨学金)などの政府系機関が並んでいる。返済が滞りそうな貸付先ではないことから、資産としては魅力的であるが、厄介な問題がある。

例えば、過疎地域の振興のための資金の調達手段として、地方公共団体は『過疎対策事業債』という債券(地方債)を発行することが出来る。この過疎債の返済額(利息を含む)の70%は、国が地方公共団体に交付する地方交付金で賄われることになっている。銀行ローンに例えれば、住宅ローンの返済資金の70%を、銀行が債務者に無償で交付しているのと同じである。

財務諸表には、貸付先毎の融資残高以外の情報は掲載されていないため、他の資料で、返済原資が国からの交付金になっている貸付金がどれだけあるか調べようとしたが、資料が見つからなかった。

債務に対応する資産があるという点は有価証券と同じであるが、細かい点も調べてみないと評価が難しい資産である。

運用寄託金

これは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)への寄託金である。負債の部に計上されている『公的年金預り金』と対になる資産である、というよりも、運用寄託金に見合う金額が『公的年金預り金』として負債計上されている。

ただし、日本の年金制度が賦課方式を基本として運用されていることを理由として、B/Sの負債の部には、将来支払う年金債務は計上されていない。よって、B/S上では資産と債務がバランスしているように見えるが、実態は精査が必要だろう。

あとは出資金が残っているが、記事が長くなるので再び次の記事で取り上げる。