国の財務諸表を読んでみた(その3)

前の記事から間が空いてしまったが、残りの部分を書いて一区切りをつけたい。
前回までの記事は次の2つ。

国の資産状況

国の資産の各科目の金額を再び掲載してみる。

科目 金額 (百万円) 構成比
固定資産 181,825,266 27.0%
有価証券 119,868,932 17.8%
貸付金 115,550,240 17.2%
運用寄託金 109,111,900 16.2%
出資金 72,452,450 10.8%
現金・預金 55,239,666 8.2%
その他資産 18,693,457 2.8%

前回までの記事で固定資産、有価証券、貸付金および運用寄託金を取り上げたので、残った出資金を取り上げる。

出資金

独立行政法人や特殊法人を設立する時に、庁舎や宿舎などの国有財産を現物出資することがあるが、この場合、国の資産を減らす一方で、その金額に見合う分を国有財産台帳に「政府出資等」という名目で計上する手続きを取っており、そうやって計上された金額の合計が「出資金」の金額である。仕訳で表現してみるとこんな感じである。

(借方)政府出資等 ●●●円/(貸方)国有財産 ●●●円

民間企業に例えると、親会社の部門の1つを子会社として独立させるときに資産を現物出資し、それに見合った議決権を得るようなものである。

独立行政法人や特殊法人は多数存在するため、出資先は非常に多い。それなのに、法人毎の出資金額が分かる資料が見つからなかったので、仕方なく手作業で出資先毎の金額を集計したところ、上位5先は次のとおりとなった。

  • 国際協力機構 -> 95,687億円
  • 日本高速道路保有・債務返済機構 -> 83,988億円
  • 国際通貨基金(IMF) -> 47,545億円
  • 日本電信電話株式会社(NTT) -> 32,256億円
  • 国際開発協会 -> 30,552億円
  • 合計 -> 290,028億円

この5つの法人で出資金の帳簿価格の4割を占めているが、これを現金化するには次の2つの方法が考えられる。

  • 出資金は株式保有と同じようなものなので、市中で売却する。
  • 国から出資した財産を返還させ、その財産を売却する。

最初の方法には、当たり前の話だが、国の出資割合が減少するという問題がある。2つ目の方法は、出資先の法人の業務に必要な財産を返還させることはできないし、不要な財産は順次返還させているので、返還させられる財産は多くない。

そもそも、出資金という勘定科目で計上されているので固定資産とは別物に見えてしまうが、元々は国の一部局や元公社が使用していた国有財産であり、それが独立行政法人になって一応は国から独立したために、出資金という形で振り替わったものである。そのため、固定資産と同様に、売却を見込むことは難しい財産である。

まとめ

国の財務諸表のうち貸借対照表をざっと読んでみたが、取り上げた項目を簡単にまとめると次のようになる。


固定資産

帳簿価格約180兆円のうち150兆円が道路や河川。残る30兆円も、換金が可能なのは財産は1兆円程度である。

有価証券

米国債を大量に保有していると思われるが、米国債を簡単に売れる訳もなく、順次償還されるのを待って、負債の部にある政府短期証券を返済していくことになる。

貸付金

返済が滞りそうな貸付先はいないが、返済原資に国からの交付金が充てられているものがあるはずで、詳細を見ないと資産としての魅力は不明。

運用寄託金

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)への寄託金。この寄託金に見合う金額が負債の部の『公的年金預り金』と計上されている。

出資金

上記のとおり


国と民間企業では在り方が違う以上、国が民間企業のような財務諸表を作成しても、民間企業の財務諸表と同じ感覚で読むことはできないし、同じ感覚で読めば誤解を与えかねない。また、将来支払う必要がある年金について、年金制度が賦課方式を基本として運用されていることを理由にして、債務として計上されていないことには注意が必要である。

また、貸借対照表は過去から現在までの国の施策の積み重ねの結果であるが、次の資産・負債は、特定の事業にかかる資産と財源という組み合わせである。

  • 有価証券⇔政府短期証券
  • 貸付金⇔財投債・預託金
  • 運用寄託金⇔公的年金預り金

貸借対照表からこうした特定の事業に係る資産・負債を除くと、一般的な事業にかかる資産とその財源だけに着目することができる。

債務超過額が大きく膨らむことはないが、資産合計329兆円のうち、有形固定資産182兆円の大部分と出資金73兆円は事実上換金不可能なため、資産の部に、公債の返済に充てられるものはほとんど無い状態である。

以上、国の貸借対照表をざっと読んでみたが、民間企業の貸借対照表と同じ目線で読むのではなく、国ならではの特殊事情に注意しながら読んでいけば、国の資産・負債について総合的に見ることができるので、使い方は難しいが、役に立つ資料だと思う。