他人に教えられる人間は努力を積み重ねた人間である

他人に教えられる人間は努力を積み重ねた人間である

前書き

どこから辿ったのか思い出せないが、とても興味深い記事を読んだ。

記事は医師の能力に関する議論で、内容を一言でまとめれば、努力をせずに年数だけ重ねたベテランが若手に劣るのは当然で、反対に、徹底的に調べて勉強することを積み重ねたベテランは非常に優秀な人材になるという話で、言われてみればその通りという話である。

この記事を読んで頭に浮かんだのが、「公務の職場でも同じような問題があるな〜」という感想と、賃金職員や非常勤職員に業務を教えるとき、教え方を変えるだけで戦力になる度合いが変わったという過去の経験であった。

公務の職場でも同じ問題がある、という点は次の記事で書くとして、今回は教え方の問題の方を書いてみたい。その方が、公務の職場で同じ問題がある、という点について書きやすいので。

アルバイトと非常勤職員の違い

賃金職員 非常勤職員
雇用形態 2〜6ヶ月の雇用契約を更新して最大で3年間 1年間の雇用契約を更新して3年間(特に優秀なら最大5年間)
給与 時間給 日給(正規職員の給与改定に合わせて変更あり)
ボーナス 支給あり(省庁によるはず) 支給あり
業務内容 単純な帳票入力やコピー取りが主な仕事 係員〜係長の不足を補うために雇用されているため、基本的には常勤職員と同じ業務。

なお、非常勤職員の場合、6ヶ月勤務すると雇用保険から脱退して公務員の退職手当の対象者1になり、12ヶ月勤務すると各省庁の共済組合に加入して、共済年金の対象になる。

どんな教え方があるか

係長相当の業務を担当してもらう非常勤職員の場合、対象となる業務について基本的な知識を有しているという前提で雇用しているので、教えることは、役所以外では遭遇しない事案の概要説明や、業務システムの入力方法などが中心となる。言い換えれば、新人教育というよりは、中途採用者への教育という感じになる。こちらは本記事の趣旨とは外れるので言及しない。

他方、賃金職員や係員相当の業務を担当してもらう非常勤職員の場合、専門知識ではなく業務遂行能力などを見込んで採用しているので、担当する業務について何も知らないという前提で教育することになる。つまり、新人教育と同じということである。

例えば入力業務を教えるとき、「この枠の内容を画面のここに入力する」というような教え方と、今からやってもらう作業がどんな業務に関するもので、その作業が業務の一連の流れのどこに位置しているのか、入力してもらう内容がどんなものか、といった情報まで教える方法の2つがある。

前者の方法で教えた場合、本人が勘の良い人間でない限り、自分がやっていることの意味が理解できず、帳票の変更などが発生したら、また一から教える事態になってしまう。後者の方法で教える場合、新入社員に教えるのと同じなので、最初は骨の折れる説明を繰り返すことになるし、教育の効果が出るまで長期間かかることは覚悟しないといけない。しかし、本人の理解が深まるにつれ、教える苦労も軽減していくし、変更があっても本人が自力で対処できる範囲が広がっていくので、色々な面でこちらの負担が軽減されることになる。

過去の体験

自分の前任者の時代に採用されて1年以上経過した非常勤職員なのに、どうも業務への理解が足りないなと思って、採用後にどんな指導をされたか確認したら、まさに上記の「この枠の内容を〜」のような指導を受けていたと分かったことがあった。これでは戦力としては弱いので、仕事を頼む都度、可能な限り業務の内容などを教えるようにし、少しでも理解を深めてもらうように努めたせいか、退職前にはそれなりにレベルアップしてくれた。

その後任者は、採用時から自分が教えられる職員だったので、最初の作業依頼の段階から、業務の内容などを通達から法令まで示しながら教えることにし、それを1年ほど続けたら、正規職員と同等レベルまでレベルアップして、それ以後、重要な戦力として所内の他の職員からも頼られる存在になってくれた。

また、2つの役職を兼務しないといけなくなった時は、新しく部下となった非常勤職員に対して、日頃行なっている作業がどういうものか、どういう理由があってやっているのかという点を、自分も勉強しながら教えていった。このときは、本人に教える際に、「なぜこの作業をしていると思う?」「そのやり方はどこで身に付けたの?」といった質問をして、本人に自分のやっていることについて振り返ってもらい、その結果を言葉にして説明してもらうことで、こちらの伝えたいことと、本人の考えとのギャップを意識してもらうように努めた。

本人も努力を重ねて、1年後にはしっかりと成長したなと感じられるまでにレベルアップしてくれたので、非常に嬉しかった。

教えるときの注意点

これは簡単で、こちらが言葉で伝えようとしているイメージと、相手の頭に描かれたイメージのギャップを可能な限り小さくする、というものである。

そのため、作業の根拠が直接通達や法令に書いてあれば、その条文を印刷して渡すことで、作業の根拠についてはこちらと同じイメージを持ってもらい、次に、その条文と現在の作業がどう繋がるかという点を説明することで、イメージのズレが生じる部分を、その繋がりの部分に限定することにした。

また、庁舎管理のように、通達や法令には当たり前の一般論(適切な管理に努める 等)しか書いていない場合は、可能な限り作業の目的などについて、具体的で解釈のズレが生じにくい言葉を選んで説明するように努めた。この場合、相手の反応はもちろん、指示した後の作業も注意してチェックするようにし、こちらの意図と違う取り組み方をしている場合、説明に問題があったと判断してすぐに軌道修正した。

このあたりの注意点については、ハウツー本も色々出ているので、いくつか読んで自分なりにアレンジするのが一番だと思う。自分が参考にしたのは次の本。

マンガでよくわかる 教える技術 | 石田 淳 |本 | 通販 | Amazon

教えられる職員はどれだけいるか

ここまで読んだ方であれば、教え方1つでレベルアップの度合いも変わるということ、そして、上手に教えるのも大変だという点についても同意してもらえると思う。

記事の冒頭に挙げたブログ記事を読んで、「公務の職場でも同じような問題があるな〜」という感想と、教え方1つでアルバイトや非常勤職員の戦力になる度合いが変わったという経験の両方が浮かんだのも、年齢だけ重ねたベテランでは、上手に教えることは無理だろうなと思ったからである。言い換えれば、テクニカルな部分を除いて、他人に体系立てて物事を教えられる能力というのは、努力しないと身につかないし、そうした努力を怠った人が「若手に劣るベテラン」になってしまうのだなと思ったのである。

というわけで、次は「公務の職場でも同じような問題がある」という点について書いてみる。