2021年に実施した3Dプリンターの改造
前置き
~~この記事は 3Dプリンター改造記録 Advent Calendar 2021 - Adventar の1日目の記事です。
(最初に本記事を執筆したときは2日目の記事でしたが、トップバッターを務められる予定だった tomorrow56@ガジェット分解(モ2済) さんが公開日を12日に変更されたので、期せずしてトップバッターになりました。)
本アドベントカレンダーは「今年実施した/今年までに実施した3Dプリンターへの改造内容をまとめる記事」なので、今使っている Prusa MK3S+ と Ender3Pro の改造履歴をまとめます。
実際の改造
私が現在使っている 3Dプリンタは「Prusa i3 MK3S+」と「Ender 3 Pro」の2台で、それぞれの改造は次のとおりです。
Prusa MK3S+
Prusa の改造は次のとおりです。Prusa は元の性能が高いので、Ender 3 Pro に比べると小規模な改造に留まっていると思います。
- Bear Extruder の導入
- ギヤードモーターの導入
- Klipper の導入
- シリコンベッドレベリング
- リニアブッシュの交換
Bear Extruder
ホットエンド回りのメンテナンス性を上げるため、エクストルーダーを gregsaun/bear_extruder_and_x_axis: An improved extruder and X axis for Prusa i3 printers に切り替えました。プリンター全体を Bear にしなかったのは、そこまでしなくても大丈夫だろうという思いと、アルミフレームを買う出費と改造の手間を惜しんだためです。
ただ、吐き出し量のチューニングに問題があったのか、ナットが手で入らないので止むなくハンダごてを使って力技でナットを入れた個所があり、あらためて印刷してパーツを交換する必要があるかなと考えているところです。
当初の狙いであったメンテナンス性の向上については、何度か分解を繰り返していますが、分解&再整備に苦労することがないので、向上が図られていると思います(切り替え前の記憶が乏しいので正確なところが不明になっています)。
ギヤードモーターの導入
フィラメントの送り出し量を細かく制御するため、減速ギヤを使ってモーターの回転数を減速させることにしました。
まず、既存のモーターにギヤを後付けできる次の MOD を使うことを検討しました。
Nema 17 Gearbox “Pulleybox” Mod for Extruder by vertigo235 - Thingiverse
しかし、これを使う改造が上手くいかないときに、3Dプリンタパーツを多数販売している TriangleLab からギヤ内蔵のモーターが販売されましたので、こちらを導入することにしました。
フィラメントの送り出し量が細かく制御できるようになり、プリント品の品質が向上しました。
Klipper の導入
既存のファームウェアに大きな不満があったわけではないのですが、印刷品質の向上等を図るためにファームウェアを Klipper にしました。なお、プリンタの制御は FluiddPi で行っています。
Welcome - Klipper documentation
fluidd-core/fluidd: Fluidd, the klipper UI.
ファームウェア切り替え後は設定で大分悩みましたが、設定ができてしまうと FluiddPi から何でもできるため非常に便利になりました。
Ender 3 Pro にも導入する予定ですが、なかなか時間がとれないため作業が進んでいません。
シリコンベッドレベリング
ベッドの水平を出すために PRUSA i3 MK3 Nylock Bed Leveling - YouTube で紹介されている方法を導入していましたが、調整がとにかく面倒でした。レベリングを繰り返して調整を追い込んでいく必要があるのは仕方ないのですが、調整の際にナイロンナットをペンチで固定しながらネジを回すという作業がとにかく面倒で、一度実施したら可能な限り再調整したくないという状況でした。
そんなとき、Silicone Bed Level Mod Prusa MK3 – SCHWEINERT.COM でシリコンチューブを使ってレベリングする方法が紹介されていて、これならベッドの上からネジを回すだけで調整が可能になって調整が楽になると思って導入しました。
実際に導入してみると、ナイロンナットを使うより簡単に導入できて調整作業も楽なので、非常にコストパフォーマンスの良い改造でした。
なお、上記のサイトでは「外径 7-8mm、内径 3mm」のシリコンチューブを使うとありますが、国内でこのサイズのシリコンチューブが見つからなかったので、モノタロウで「外径 6mm、内径 3mm」のシリコンチューブを購入しました。
SR1554 シリコンチューブ タイガースポリマー 内径 3Φmm、外径 6Φmm、長さ 1m、SR1554、1巻 - 【通販モノタロウ】
リニアブッシュの交換
Prusa は XY 軸の可動部分が V スロットではなくリニアブッシュですが、移動時に結構な音がするので、これを少しでも静かにするためにプラスチック製のリニアブッシュに交換しました。使ったリニアブッシュは ドライリンR リニアベアリング RJ4JP-01 です。
体感による比較ですが、交換してからは XY 軸の移動時の音が少し静かになりました。これ以上静かにしようと思ったら、モーターダンパーを導入して、さらにプリンタをコンクリート板の上に載せる必要がありますが、いまのところそこまで行う予定はないです。
Ender 3 Pro
Ender 3 Pro の改造も色々行っています。MOD も改造パーツも豊富な機種なので、色々いじりがいがあります。
- マザーボードの交換
- BLTouch の導入
- XY 軸のリミット制御をセンサーレスホーミングに切り替え
- エクストルーダーをダイレクト化
- Z 軸をデュアル化
- エクストルーダーファンを Noctua 製に切り替え
マザーボードの交換
私が買った Ender 3 Pro のストックのマザーボードのモータードライバーは8ビットだったので、印刷中の騒音がひどかったです。そのため、モータードライバーの32ビット化を図るため、Bigtreetech 製の SKR mini e3 V2.0 に取り換えました。これにより騒音問題が解消し、動きも滑らかになって印刷品質も向上しました。また、後述する BLTouch の導入やセンサーレスホーミングの導入も簡単にできるようになりました。
あと、ファームウェアを更新するときにマザーボードと PC を接続する必要がないのも便利です。
BLTouch
オートベッドレベリング導入のために行いました。これにより、最初にベッド4隅のネジを調整してベッドの水平を出してしまえば、ベッド内の凹凸によるレベリングの差は BLTouch のメッシュベッドレベリングで対応できるようになりました。
センサーレスホーミング
SKR mini e3 V2.0 のモータードライバーは TMC2209 で、ジャンパコネクタでマザーボードのヘッダーピンの接続を変えるだけでセンサーレスホーミングが使えます。印刷品質向上には繋がらないですが、リミットスイッチを撤去できて配線が楽になり、また、リミットスイッチが壊れても限界を超えてエクストルーダーやベッドが動くことが無くなりました。あと、なんとなく Prusa っぽい動きにもなったのもうれしい点です。
これに伴い、ついでにリミットスイッチの代わりになる部品を設計して取り付けています。Auto Home 移動時は、この部品にぶつかってプリントヘッドやベッドが停止します。
ダイレクトエクストルーダー化
エクストルーダーのダイレクト化は、次の MOD を使って行いました。
ダイレクト化により、糸引きを大幅に減らすことができるようになりました。また、この MOD は V6 ホットエンド対応なので、ストックの MK8 ホットエンドから V6 ホットエンドに交換しました。これにより、それまでたまに発生していたホットエンド内でのフィラメント詰まりも発生しにくくなりました。
Z 軸のデュアル化
Z 軸のデュアル化は、左右の Z 軸で動きに差が出ることを避けるために行いました。幸い、SKR mini e3 V2.0 はデュアル Z 軸に対応しているため、パーツを購入して配線すれば簡単に実現できます。これにより、左右の Z 軸の動きにずれが出なくなりました。
購入したパーツはこちらです。
3dプリンター部品Ender 3プロ用アップグレードキット,アルミニウム,デュアルz軸|3D Printer Parts & Accessories| - AliExpress
エクストルーダーファンの交換
エクストルーダーファンの交換ですが、ストックのエクストルーダーファンは爆音で耳障りだったため、Noctua ファンに交換しました。
Ender 3 Pro のエクストルーダーファンは24Vで動く前提となっており、SKR mini e3 V2.0 も24Vの電圧を供給しているため、DCDCコンバーターで電圧を24Vから12Vに変換しています。これによりファンが非常に静かになりました。
なお、この改造はつい最近行ったため、これで冷却が十分足りるかどうかの検証は不十分な状態です。
最後に
以上が2021年に実施した3Dプリンタの改造です。
色々と改造を行っていますが、どちらのプリンタもまだ改造したい点はあります。現時点で考えている改造は次のとおりです。
Prusa
- The PitStop Extruder for Prusa printers の導入
- フレーム全体を Bear に改造
- リニアレールの採用
- Backlash 低減のための改造
Ender3
- Klipper の導入
- エクストルーダーの交換(今のエクストルーダーはホットエンドの冷却が少々気になる)
- リニアレールの採用
何かを作ることも楽しいですが、改造すること自体も楽しいのが3Dプリンタだと思っていますので、来年も色々やってみる予定です。
次のアドベントカレンダーの記事は @Ikeji さんの Ender 3改造記録 | my.remarkbox.com です。